損失の多い「テロ対策」
今日から新しい入国審査が始まっています。
これは米国に次ぎ世界で2番目の導入とのことです。
表向きの理由としては「テロ対策」ということですが、これにより鳩山法相の友人の友人も入国することができなくなるのでしょうか。
クローズアップ2007:来日外国人、指紋採取開始 不法入国摘発に効果
全国の空港と港で20日、来日する外国人から指紋・顔写真の提供を義務付ける新しい入国審査が始まる。9・11テロを受けた米国に次いで2番目の導入となるが、99年に全廃された「指紋押なつ制度」の復活ともいえる内容だ。治安のため不可欠とされる一方、究極の個人情報が管理されることへの抵抗感も小さくない。外国人ビジネスマンが日本を敬遠する恐れも指摘されている。
◇「犯罪者扱い」批判も
今年3月、他人名義の旅券で入国したとして、成田空港で中国人の20代の女が逮捕された。入管職員は、左右5本ずつの指の皮膚が切られているのをみて驚いたという。女は05年に不法残留容疑で強制退去されており、その際に指紋を採取されている。調べに対し「指紋でばれないようにした」などと供述した。
06年の統計では、強制退去者約5万6400人のうち、約13%が前にも強制退去させられていた。ある入管幹部は「生体情報の提供が義務となれば、他人になりすますのは不可能。全指を判読不能にしても、逆に摘発のきっかけになる」と自信をみせる。
下半期で約36億円の予算をかけ、携帯用も含め約540台の装置を配備してスタートするシステムは、採取した生体情報と約1万4000件の国際指名手配情報、約80万人の退去強制者の資料(要注意リスト)を照合させる。国会答弁などでは、目的の「主」はテロ対策。来年7月の北海道洞爺湖サミットを控える政府関係者は「テロリストにとって大きな抑止力になる」という。だが、実際には「従」の不法入国対策の方が、目に見えて効果が出るとみられる。
入管には今後、年間約600万~700万人の情報がコンピューター上に蓄積されていくとみられるが、これは犯罪捜査にも使える。ある警察庁幹部は「日本で事件を起こしては帰国する外国人犯罪グループを水際で摘発することが可能になる」と歓迎している。
一方で批判も強い。
「外国人向けと高をくくっていると、日本人にもツケが回ってくる」。10月27日、制度に反対する複数の市民団体が主催したシンポジウムで「米自由人権協会」幹部、バリー・スタインハード氏は約150人を前にこう語った。指紋押なつ制度全廃以来、身柄拘束など刑事手続き以外では指紋提供の義務付けはなかった。犯罪者同様の扱いへの抵抗感に加え、生体情報がどう使われるのかが見えにくいのも問題点だ。
また、国内に住む外国人がいったん出国し、再入国しても指紋を採られる。トルコの迫害から逃れてきたというクルド人の男性(29)はかつて入国の際、入管に収容され指紋を採取された。「このシステムは外国人全体を犯罪者とみている証しだ」と訴える。
さらに、テロ対策といっても「穴」がないわけではない。例えば、旅客機の乗員からは生体情報を全員採取するが、船員は入管の人員不足もあって「可能な範囲で採る」ことになっている。ある法務省関係者は「元々テロ対策として万全ではない。第一、照合する要注意リストにどれだけのテロリスト情報があるというのか。『広く指紋を集める』ことが目的化する危険性も否定できない」と疑問視する。【坂本高志】
[2007年11月20日 毎日新聞]
「テロ対策」と言いながら、実際は不法入国対策のようです。
そもそも、日本国内では最近、テロによるものと思われる事件は起きていません。
そして、今回の入国審査でもデータのある「テロリスト」は入国を阻止できるでしょうが、「新人テロリスト(?)」や「日本人テロリスト」の入国までは阻めません。
こういう措置をして、「テロリスト」に注目される方が却って危険なのではないでしょうか。
また、今回の入国審査は、日本人には直接の関係はありません。
しかし、米国がこの制度を導入した後、ブラジルが対抗措置として米国人だけを対象に、入国時に指紋の採取と写真撮影を実施するなど、外国の反発をかったそうです。
日本に対しても何らかの報復措置があっても不思議ではありません。
それに、今のところは外国人だけが対象ですが、システムを導入してしまえば対象の範囲を拡大することは容易です。
指紋の採取と写真撮影の義務化が日本人にまで行われる日が来るのはそれほど遠くないのかもしれません。
その他にも、情報の漏えいや再入国外国人が不便を被るという点なども不安として指摘されています。
つまり、今回の制度の対象となるのは、特別永住者、外交官などを除く16歳以上の来日外国人です。
ということは、日本への貢献などが認められ永住資格を持つ一般永住者や日本人と結婚して日本に住む外国人も、海外に出て日本に戻れば審査の対象となります。
経済の面ではこういう声も出ています。
日本進出欧州企業を支援する「欧州ビジネス協議会」の政策担当者ヤコブ・エドバーグ氏によりますと、欧州の経営者からは「香港なら都心に近いうえ、入国カード1枚で入れる」など、日本から近隣諸国への「外国人ビジネスマン流出」に警鐘を鳴らす意見も出始めているということです。
以前から、日本政府は海外からの観光客を増やしたいとも言っていたように思うのですが、結局は口だけなのですね。
そんなに外国人が怖いのならば、再び鎖国でもしますか。
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コメント
TBありがとうございました。
顔写真の吸い上げは、残念ながら始まってます(T_T)
防犯カメラの情報を公安警察が収集しています。
税金でカメラを増やすと叩かれるので、民間に
依頼する形で、特定の業者のバカ高い設置工事
(1台50万以上)をさせ、撮影データのみ提供させる
仕組みです。
「警察が防犯体制をバックアップする安心料として、
カメラだけは設置してね。」
この仕組みは「オウム真理教監視対策」の名目で
東京・成城署を皮切りに導入されたので、
「成城方式」というそうです。
コンビニ等の店先のカメラはもちろんですが、
会社やマンションなど、個人が特定しやすい施設を
本来は一番のターゲットにしているのでしょう。
これは憶測ですが、民間警備会社には大勢の警察OBが
いるはずですから、それは難しくないんでしょうね。
新型パスポートのICタグに焼かれた顔写真と
コンピュータ照合すれば誰がそのカメラに映って
いたかスグわかります。
オムロン社のシステムの精度は世界一ですから。
改憲反対のデモなんかで個人を撮影・特定して
オドシをかけるのにとても便利です。
これから政府・経団連のキモイリで一気に導入
しようとしている
「静脈認証でカンタン決済」。
(社員食堂でもコンビニでもカードが要らない。)
少し前に通っちゃった「ゲートキーパー法」。
(金融機関の入出金記録を警察に強制提出させる。
もちろん静脈認証キャンペーンはこの推進の為です。)
この4月から携帯キャリア各社と警察のGPSによる
個人位置捕捉システムが一体化したこと。
(ケータイの電源が入ってれば24時間位置を追える。)
そしてアクセンチュア社を通じて米CIAと日本の
治安当局が、指紋をはじめ個人データを共有する
1兆円ビジネスの一環として、
今度の外国人指紋採取強制があるらしいのです。
アメリカに行った日本人の指紋はすでに日本の
警察のサーバに納まっています。
裁判官が勝手にメンバーを選べる裁判員制度も
まもなく始まります。
そして共謀罪導入も、ホンキで監視しないと
実現してしまいます。
これらを組合わせれば、戦前どころか、ドラマ「24」や
オーウェルの「1984」を地で行く社会の準備完了です。
個人を丸裸にして最後の1円までアメリカの戦費や
財界の資金として絞り上げ、若者を有無を言わせず
戦場に送り込むには、サイバー社会は最高の環境です。
株券の電子化も、もちろんそのためでしょう。
海外口座にカネが逃げる前に国民を洗脳し、
現金を持たせなければ、いざとなれば預金封鎖は
一瞬にして行えますからね。
とむ丸様も指摘されていますが、自公政権が次に
狙って来るのは、たぶん体内へのICタグ埋込み。
そしてさらに恐ろしいのはDNA情報の採取でしょう。
(考えたくないことですが、新生児にチップを埋め込み、
DNA検査をしなければ戸籍を与えないように法制化
してしまえばできない話ではありません。強行採決で。)
このままでは、いずれそうなると思います。
多くの国民が気付かない間に、
奴隷化政策の外堀はほとんど埋まってしまいました。
総選挙で政権交代しなければ、日本はお先真っ暗です。
書いてて自分でも怖くなりました。
長文カキコ失礼致しました。
これからもよろしくお願いします^^;
投稿: Francisco | 2007年11月22日 (木) 12時04分
EUも2年後から始まるのに、何を寝言言ってるのやらと思いますが。
無知もしくはあえて言わない自称人権団体は、このへんまるっきりスルーしてますし。
投稿: もけ | 2007年11月24日 (土) 18時24分
こんんちは、
Francisco さんのも、もけ さんのも、
興味深いお話ですね。
以前、斉藤貴男さんの講演でコンビニの交番化のお話聞きました。
まあ昔から、パチンコ屋とかにそんな傾向あったンかな?或いは宿帳とかにも。と、ふと考えました。
でもDNAレベルとなると、オーウェルもそのモデルのスターリンも、ビックリですね。
科学が「巧」度になるのも、なんだかね~。って気がします。
そういえば、昔、指紋押捺制度を内務省だったかな?が導入しようとして、皇族の方々にも(っていうか、臣民を納得させるべくまず最初に)協力して頂こうっていう話があった、って聴いたことがありますが,真偽の程は定かではありません。
秩序を創るために、混乱を恐れるあまり、
『機構』そのものになってしまうのは、洋の東西、時代を越えた『傾向』なのかも?
古代中国の秦帝国を監理した『法家』、その完成者、韓非子のイデオロギーの魔力って凄いのかも? ヘーゲルのプロシア帝国賛美なんかよりも、ずっと古くから、絶対王政『官僚制と常備軍』を理論化定式化してますから。
漱石ら明治の人は古典知ってましたか、漢文も読めたし、昭和の貧弱さは西洋かぶれというよりも、東アジア古典・古代をすっ飛ばした辺りにあるのかも? 日清・日露戦争で勝って『日本中が思い上がった』辺りから、リベラル鴎外は、保守に「転向」する。
あ、長々と書いてすみません。この辺り、また自分のログで書いていきたいと思います。
では。
投稿: 三介 | 2007年11月25日 (日) 11時39分
francisco さん
こんにちは、コメントありがとうございます。
科学技術の発達によって、ある程度まで監視社会化が進むのは、やむを得ない部分もあるのかもしれません。ただ、この国は何でも利権が絡み、人権よりも利権という考えで物事が進むので怖いところがあると感じています。
貴重な情報をありがとうございました。
こちらこそ、これからもよろしくお願い致します。
もけ さん
こんにちは、コメントありがとうございます。
EUも2年後から始める、ということは私も知りませんでした。
このあたりは、情報収集の大切さを再認識すると同時に、マスメディアの役割も大きいと思います。
また、現場が混乱しないためにも、前もって政府がもっと広報活動をしておくべきだったと感じます。
貴重な情報をありがとうございました。
三介 さん
こんにちは。
現在のこの国の政治には思想や哲学などはなく、すべてがカネで動いているように思います。
利権がらみで設備を買ったから、指紋や写真でも集めようか、と。そして、それを担当する部署はそのためだけに延々と生き続ける。
こんな感じで続けてきたこの国が行き詰っているのが現状ではないでしょうか。
話は変わりますが、西洋的なものが独裁で、東洋的なものが専制でしたっけ?
その程度の知識しかありませんので、また勉強しておきます。
コメントありがとうございました。
投稿: もそもそ | 2007年11月25日 (日) 18時51分