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2007年8月29日 (水)

「御殿場事件」は事件なのか

先週、御殿場事件という「事件」の控訴審判決が東京高裁でありました。
テレビなどでも取り上げられましたのでご存じの方も多いと思いますが、ご存じでない方のために、かなり長くなりますが読売新聞の記事を紹介します。


静岡県御殿場市で2001年、少女(当時15歳)を乱暴しようとしたとして、婦女暴行未遂の罪に問われた当時16~17歳だった元少年4人(22~23歳)の控訴審判決が22日、東京高裁であった。
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 中川武隆裁判長は、4人を懲役2年(求刑・懲役3年)とした1審・静岡地裁沼津支部判決を破棄し、いずれも懲役1年6月の実刑判決を言い渡した。弁護側は上告した。

 判決などによると、元少年4人は01年9月に仲間の少年6人と、少女を同市内の公園に連れ込み、乱暴しようとしたとして逮捕された。4人は捜査段階で容疑を認めたが、家裁の少年審判で否認に転じ、検察官送致(逆送)後、起訴された。

 ところが、1審公判で、少女が犯行日についてウソをついていたことが判明。検察側が犯行日を同年9月16日から同月9日に改める異例の訴因変更を行った。このため、少女の供述の信用性と、ウソの犯行日を前提に犯行を認めた4人の自白調書の信用性が最大の争点となった。

 高裁判決はまず、少女の供述について、「犯行日について変更したが、被害を受けた経緯や被害状況などについてはほぼ一貫しており、内容も具体的で自然だ」と指摘。ウソをついた点についても、「他の男性との交際を隠すためだったなどの理由は十分理解できる」とし、「被害自体が虚構だったとは言えない」と判断した。

 一方、4人の自白調書について、判決は「間違った犯行日を前提とした部分を除き、根幹部分は十分信用できる」とし、実際の犯行日の元少年らのアリバイ主張についても、「いずれも信用できない」と退けた。

 弁護側は、公判途中で犯行日を変更した手続きは違法とも主張したが、判決は「捜査機関の当初の裏付け捜査が万全を尽くしたとはいえなかった」としながらも、「被害者の供述変更によるやむを得ないものだった」と述べた。刑を軽減した理由については、「被害者の被害申告にも問題があった点を考慮した」と説明した。

          ◇

 この事件では、当時中3~高2の少年10人(15~17歳)が逮捕され、捜査段階では全員が犯行を認めた。しかし、静岡家裁沼津支部で行われた少年審判で5人が否認。このうち4人が検察官送致(逆送)され、起訴された。別の1人は、刑事裁判の無罪に当たる「不処分」となったが、検察側が抗告。東京高裁、最高裁で不処分が取り消された後、起訴され、1審で有罪判決を受けた(控訴中)。

 一方、少年審判で非行事実を認めた5人のうち4人は中等少年院送致、1人は保護観察処分となったが、その後、無実を訴えていた。さらに、少年院送致されたうちの1人は、処分の取り消しを申し立て、静岡家裁沼津支部が今年1月、刑事裁判の再審に当たる「審判開始」を決定している。

[2007年8月22日12時41分  読売新聞]


10人の少年が15歳の少女に乱暴しようとしたとして、訴えられました。少年たちは捜査段階で全員容疑をを認めました。その時点では犯行日は9月16日ということでした。
その後、少年審判で5人が否認(最終的には10人全員が否認)し、そのうち4人が起訴されました。
つまり、少年たちは裁判ではずっと否認しているわけです。

裁判中に少女が犯行日についてウソをついていたことが分かります。そのため検察側が犯行日を9月9日に変更します。 9月16日には少女が他の男性と会っていたことが判明したからです。

少年たちは一旦犯行を認めてはいますが、 その際の犯行日は9月16日でした。一方的に日付を変えてそのまま犯行を認めろ、というのもひどい話です。
その上、この日付の変更には重大な意味があります。
それは9月9日の現地の天気は雨だったというのです。にもかかわらず、雨に関してはどの供述にも一切ないそうです。

このほかにも少女の供述は途中で何点か変更されたということです。
それでも判決は、少女の供述は「根幹部分は十分信用できる」としていますが、懲役2年の一審判決を懲役1年6か月に軽減しました。その理由が「被害者の被害申告にも問題があった」というものです。
つまり少女の供述は信用できるが、問題もあるので減刑します、ということでしょうか。

私もこの事件は今回の判決で初めて知りました。ですからあまり詳しくはないのですが、どうも冤罪の香りがします。
この事件は初めからなかった、と考えると一番スッキリするような気がします。

容疑者が捜査段階では容疑を認めたが、裁判で否認する‥‥。
新たな事実が出て来ても、強引にそのまま裁判を進めてしまう‥‥。
などは、典型的な冤罪のパターンです。

この高裁の判決を見ると、日本の司法は大丈夫かと不安になりますが、私達が知らないだけで、こういう判決はそれほど珍しくないのかもしれません。

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この事件・裁判に関する記事を以下に紹介させていただきます。

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阿曽山大噴火コラム

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コメント

御殿場事件はりっぱな事件のようです。ただし被告が違います。現在被告とされている少年ではなくて、被告を被告とした者たちです。つまり司法組織であり、国家権力です。

これは事件にしなければなりません。こうしたことを看過していると、国家権力はもっともっと事件を起こすようになるでしょう。

投稿: 愚樵 | 2007年8月31日 (金) 07時26分

愚樵様

こんにちは。
被害者が犯行日を変更した時点でも止まらない裁判は恐ろしいです。
マスコミをはじめ国民が、今以上に関心を持たないと、この事件はおそらく最高裁でも有罪になるのではないでしょうか。

コメントありがとうございました。

投稿: もそもそ | 2007年9月 1日 (土) 13時07分

今日放送のドキュメントでこの事件の特集をやってました。有罪が確定して 家族と離れなければならない時の映像は 涙が出ました。被害者の証言の矛盾点をなぜもっと重く見て捜査しなかったのか不思議でなりません。日本では 訴えたもの勝ちなのか?と疑問を生む事件です。警察や検察、裁判所の意味など もはや無いですね。こんないい加減な時代に何が裁判員制度だ!日本も終わりだ。と思います。

投稿: 亜矢 | 2009年6月 1日 (月) 21時28分

はじめまして
報道を見ました
確かに少年達はその当時問題がある子供だったと言われてましたが 15歳にして出会い系サイトで援助交際をしていた被害者とされる少女を何の問題もなく信じる事自体 疑問に思いました。
このようなことが現実に起きている事を法務大臣に知って欲しいです。

投稿: 真の正義 | 2009年6月 2日 (火) 06時35分

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8月29日のきっこのブログ「死刑廃止論を廃止しろ!」を読んだときには、きっこさんの表現を借りていえば、ビックルを一気飲み、ほんとうに驚いた。 きっこさんも書いているとおり、人のブログの内容をつべこべ言っても意味がないことは認めるけれど、100%じゃないけどかなりわたしと考え方が近いと思っていたきっこさんに死刑容認論を書かれちゃうと、やっぱり悲しくなってしまう。 彼女は以前から山口県光市の母子殺人事件の容疑者には極刑を主張していた。それに加えて今回は、イタリアの放火魔らや覚せい剤密輸の罪で... [続きを読む]

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