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2007年9月10日 (月)

抑止効果は測れない

先月、愛知県でインターネットで知り合った3人の男が帰宅途中の女性を殺害した事件がありました。私は8月27日に 人命より尊いものはない で取り上げましたが、8月28日には産経新聞の産経抄というコラムがこの事件を扱っています。少し長くなりますが全文を転載します。


本日のテーマは、内閣改造で決まりのはずだったが、書かずにはいられない。名古屋市の住宅街で、男3人が見ず知らずの31歳の女性を拉致し、金を奪って殺害、岐阜県の山林に遺体を捨てた事件のことだ。

▼女性が自宅を間近にして、 ミニバンに引きずりこまれたのは24日の午後10時ごろ。夜遊びしていたわけではない。普段は午後7時半ごろ帰宅しているが、この日はたまたま午後からの仕事でおそくなっていた。幼いころ父親と死別し、母親との2人暮らしだった。

▼囲碁が趣味で、読書や料理も好きだった。「母のために家を建てたい」と将来の夢を語り、結婚話が進んでいた、と報じる新聞もあった。殺される何のいわれもない。それどころか、周囲の人たちが幸せを願わずにはいられない、親孝行に励む知的でまじめな娘さんの姿が目に浮かぶ。

▼だから余計に「金を奪うなら力のない女の方が狙いやすい」とうそぶいて、その通り実行した男たちに怒りがこみ上げてくる。か弱い女性の両手首に手錠をかけ、顔に粘着テープを巻いて身動きできないようにして、ハンマーでめった打ちにするなんて。

▼一人では何もできない人間に限って、群れると残酷なことをしでかすものだ。見知らぬ人の善意や知恵を結びつけるインターネットは、同時に悪人の連携を促し、犯行をエスカレートさせることもある。恐ろしい世の中になった。

▼事件発覚のきっかけは、男の1人が、愛知県警にかけた電話だった。罪の重さに耐えかねたというより、「死刑が怖かった」かららしい。身勝手きわまる言い分だが、その後も繰り返されたかもしれない凶行を、「死刑」が抑止したともいえる。死刑廃止論者たちはこの言葉をどう聞くだろうか。

[2007年8月28日 産経新聞]


犯人のうち1人の男が「死刑が怖い」という理由で自首しました。だから、死刑に抑止力があると言いたいようです。
私はすべて刑罰はどのようなものであろうと、それなりに抑止力はあると思います。
ですから、死刑にも当然ある程度の抑止力を認めます。

一方、本日9月10日、ある事件の初公判がありました。


京都府長岡京市の主婦岩井順子(よりこ)さん(57)と神奈川県相模原市の無職加藤順一さん(72)が1月に相次ぎ殺害され、現金などが奪われた事件で、2人の親族で強盗殺人罪に問われている住所不定、無職松村恭造被告(26)の初公判が10日、京都地裁(増田耕児裁判長)であった。松村被告は「2人を殺したことは認める。ただし、金取り目的は否定する」と述べ、起訴事実を一部否認した。動機については、自らの自殺願望に触れ「どうせ死ぬなら恨みのあるやつを殺して死のうとした」などと語った。

松村被告は罪状認否で「何年も前から人生が楽しいとは思えなく、破滅、自分の死を望む気持ちがあった」と説明。岩井さんを殺害した理由については「ひどい侮辱を受けたのを恨みに思っていた」などとした。岩井さんを殺害後に自殺を試みたが果たせず、「勘定あわせにさらに人を殺してやる」と考え、加藤さんを殺すことを決意したと述べた。

同被告は陳述の最後に「人殺しを2件も冷静に完遂した。自分で自分をほめてあげたい。被害者の冥福を祈る気持ちは全くない」とさえ語った。

[2007年9月10日 asahi.com]


この被告に対する判決は、おそらく死刑でしょう。被告もそれを望んでいるようです。
また、以前大阪で小学校を襲った男がいました。彼は、「道連れは一人でも多い方がいい」「幼稚園を襲えばもっと殺せた」などと言っていたといいます。
これらの犯人は死刑になることを自覚して(むしろ望んで)、犯行に及んでいますから、当然彼らに対しては死刑は抑止効果を持たなかったわけです。むしろ逆効果だったかもしれません。

結局、死刑の抑止効果はその時々、その犯人による、ということでしょう。
実際に、冒頭の愛知県の事件にしても、3人のうち1人が自首しただけですし、それも被害者が出てからのことです。被害者やその遺族からすれば、死刑の抑止効果があったと言われても虚しいだけでしょう。
また、殺人に対する予防という観点から見ると、死刑に抑止効果があれば事件が起きませんから、その効果のほどを証明することはできません。


産経
抄の筆者は被害者を、「殺される何のいわれもない。それどころか、周囲の人たちが幸せを願わずにはいられない、親孝行に励む知的でまじめな娘さん」と表しています。
もちろん、このような素晴らしい女性が
殺されていいはずはありません。
ただ、殺されるいわれがないのは、親不孝な娘だろうと、身寄りのないホームレスだろうと同じことです。
殺されていい人命などありません。

世の中のほとんどの人は死刑制度の存否にかかわらず、殺人を犯すことはないでしょう。

いかなる理由があろうと人の命を奪ってはいけないと、全ての人が認識することしか殺人を予防することはできないと、私は考えます。

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コメント

こんにちは。

今回の場合、加害者(有実だとして)は3名で、被殺害者は1名ですから、恐らく死刑にはならないでしょう。公判になれば、その自首した男は多分「殺人までいくとは思わなかった」などと自己保身を図るのでしょう。

何年かのちには服役を終えて社会復帰。「償いは済ませました。もう済んだことです」こうなるのでしょうか。

>殺されていい人命などありません。

仰る通りですが、既に殺されてしまっているのですから、このような言葉を繰り返しても虚しいように思います。

投稿: DH | 2007年9月16日 (日) 10時30分

DH様

こんにちは。コメントありがとうございます。

名古屋の事件は自首した男はもちろんのこと、あとの二人も死刑にはならないかもしれません。
どの程度の量刑が適当なのかは非常に難しい問題ですね。

>殺されていい人命などありません。

産経抄の筆者は被害者の方を「親孝行に励む知的でまじめな娘さん」と表現しています。
当然のことですが、親孝行でなくても、まじめでなくても、殺されていい訳ではないという意味で強調しました。

投稿: もそもそ | 2007年9月17日 (月) 11時16分

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