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2007年8月 9日 (木)

「週刊ポスト」に敬意を表す

今マスコミでバッシングされている人と言えば、安倍首相と横綱の朝青龍でしょうか。安倍首相はともかく、個人的には朝青龍はちょっとかわいそうな気もします。ほとんどすべてのマスコミが敵のようですから。一度こういう状況になると大変だろうと思います。

その朝青龍以上に非難されているのが、光市母子殺害事件の21人の弁護団ではないでしょうか。同じ弁護士の中にも痛烈に批判している人もいます。
私もこの事件に関してはテレビ報道以上のことは知らなかったので、同じように弁護団に対して悪いイメージしかありませんでした。

この事件は被害者の遺族がテレビで発言することも多く、他の事件よりも情報量は多いはずです。にもかかわらず、私は、なぜかこの事件の加害者については良く知りませんでした。

現在発Weeklypost_2売中の「週刊ポスト」(8.17/24合併号)にこの事件に関する記事が載っています。
内容は、弁護側に依頼されて被告の精神鑑定をした精神科医のインタビューです。
この記事を読んで初めて被告がどんな人間か、弁護団が何を主張したいのかが分かりました。

この事件の裁判の流れを見てみると、弁護側は一審、二審と起訴事実を争いませんでした。判決は無期懲役です。
そして検察側が死刑を求刑して上告した結果、最高裁は審理を高裁に差し戻します。当然、差し戻し審では死刑判決の可能性が濃厚です。
そこで弁護人が代わり、弁護方針も変わりました。そのため、一審二審で認めていたことを否定することになり、マスコミから弁護団がバッシングされることになります。死刑回避のための法廷戦略だ、というわけです。

マスコミ報道ではこのようになりますが、「週刊ポスト」の記事を読んだ印象では、一審二審での弁護の方に問題があったように思えます。差し戻し審で初めて普通の弁護活動がされている感じがします。

以下、記事を参考に弁護団が精神鑑定を求める件を少し。

(差し戻し審で)弁護士が精神鑑定を依頼しています。その理由は、被告と接見した際、被告の述べることが理解できず、あまりの幼さに驚いた。その上、家庭裁判所の調査官による「少年記録」には、「被告のI Qは正常範囲だが、精神年齢は4、5歳」と書かれていた。また、生後1年前後で頭部を強く打つなどして、脳に器質的な脆弱性が存在する疑いについて言及していました。
さらに、広島拘置所では、被告に統合失調症の治療に使う向精神薬を長期多量に服用させていました。これに当惑した弁護団が精神鑑定を求め、裁判所が認めたということです。

そして、精神鑑定の結果、「被告は事件当時、精神病ではなかった。しかし、精神的発達は極めて遅れており、母親の自殺時点で留まっているところがある」という結論になりました。


全体で6ページに亘る長い記事ですので、以下簡単にまとめますと、被告は家庭内暴力の被害者だったこと、母親と母子相姦的な関係にあったこと、その母親が被告が小学生の時に自殺したこと、その後の被告の精神的発達が止まっていることなどが明らかにされています。

なぜ弁護団が精神鑑定を要求したのか、被告人の生い立ちや精神状態はどのようなものなのか、などは他のマスコミでは目にしなかったように思います。
その点この「週刊ポスト」の記事は、冷静に本来のマスコミが担うべき役割を果たした良い記事です。

被告を死刑にするかどうかは裁判所の判断です。
その前に真実が明らかになる必要があります。
そして解明された事実を正しく伝えることがマスコミの役割であるはずです。
今はどのメディアも、犯人憎しの報道で同じ方向を向いていて、事実を追う媒体は全くありません。

この時期にこのようなインタビューを掲載した「週刊ポスト」に敬意を表します。
また、この事件に興味のある方でまだお読みでない方には、ぜひ読んでいただきたいお薦めの記事です。

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光市母子殺害事件」カテゴリの記事

コメント

お邪魔します。
 結局は「(社会の正式な一員ではない)少年だ
から適当に扱い、少年だから死刑にするなと言
う」事ではないでしょうか。もしそうなら「被告
の元少年が殺人者になるまで(犠牲者が出るま
で)何もしなかった者の責任」はどうなるので
しょう。

投稿: ブロガー(志望) | 2007年8月10日 (金) 06時52分

鑑定人についてはルポライターの藤井誠二氏のブログにいろいろ載ってますね。
参考までに

悲しすぎる弁護士さんらのこと。
http://ameblo.jp/fujii-seiji/entry-10034695526.html
光市事件。悲しすぎる弁護士さんや精神鑑定人らのこと。
http://ameblo.jp/fujii-seiji/entry-10035889829.html
Aさんへの手紙・・・ある「精神鑑定医」の変節について
http://ameblo.jp/fujii-seiji/entry-10039442269.html
野田正彰さん、だいじょうぶですか。
http://ameblo.jp/fujii-seiji/entry-10041255241.html

投稿: いい時代 | 2007年8月11日 (土) 16時19分

ブロガー(志望)様、いい時代様

コメントありがとうございます。
この「週刊ポスト」の記事は、少年法や死刑の是非といった観点から書かれたものではありません。他のメディアではほとんど見られない犯人(被告人)の情報です。
この記事中の精神科医の見解をどう見るかは、受け取る側の自由だと考えます。
ただ、マスコミの重要な役割として、多くの情報をいろいろな角度から提供するということがあると思います。
その点から、今回の「週刊ポスト」の記事を高く評価しました。
もちろん記事を読んだ後、どのように考えるかは人それぞれの自由です。

投稿: もそもそ | 2007年8月11日 (土) 19時11分

マスコミや世間はいつも結論が先にあるんですよね。一つ一つの事実を見て死刑かどうかを判断するのが裁判できめるのに世間はマスコミ報道から判断してなんで結論を出してしまう。テレビをみてすべてわかった
気になってる人が多い今の社会は危険だと思います。

日本人は裁判や弁護士の役割について
一から学ぶ必要がありますね。

投稿: FX | 2007年8月23日 (木) 00時07分

FX様

こんにちは。コメントありがとうございます。
マスコミ、特にテレビは真実よりも映像が大事なのでしょう。そして受け手側も画面による印象で理解したつもりになり、自分の頭では何も考えない人が多いと思います。
ほとんどの日本人にとって裁判は他人事でしたが、裁判官制度が始まるとそうもいきません。おっしゃるように、まずは知識を得ることが大切ですね。

投稿: もそもそ | 2007年8月24日 (金) 07時42分

元々、低俗な捏造記事を得意とする三流週間誌である「週間ポスト」の記事を信頼している人は少数派のはず。

投稿: 玄海灘 | 2007年9月 6日 (木) 08時25分

玄界灘様

こんにちは。コメントありがとうございます。

「週刊ポスト」の評価はともかく、この記事は公判でも証言した精神科の医師が、その証言に基づいて述べているインタビューですから、「週刊ポスト」による捏造ではありません。
それでも信用しないというのは、もちろん自由です。

投稿: もそもそ | 2007年9月 8日 (土) 13時51分

死刑判決が昨日出ました。どういう事件だったのか、改めて調べていて、貴兄のブログのこの文章を見ました。死刑を望む気持ちを持っていた自分が恥ずかしくなります。少年の生い立ちも知らずに、その裁判報道で流される少年の言動の異常さだけに当惑の思いでした。なぜこのような事件が起きるのか、その背景を知ることの大切さを思います。私もまたその父親であったかも知れない、とも思い至ります。自分ができることは何なのかを考えさせられた、貴兄のこの文章に心よりの敬意を表します。

投稿: kyo | 2008年4月23日 (水) 17時44分

2008年7月23日、日本最強の捜査機関である検察庁総元締め最高検察庁から事務局長が岡山に。税金での出張でありながら岡山、倉敷の観光地を地検の職員を案内役にしての大名行列。大学病院だけではなく、犯罪者を取り締まる側が、税金の無駄遣い、いや税金泥棒。明日、岡山地検と倉敷区検を見張れば、決定的な特ダネ写真が取れる筈。

投稿: 源 一朗 | 2008年7月22日 (火) 21時19分

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